映画 「トレインスポッティング」 考察 陽気と絶望のギャップが生み出す汚物まみれの青春映画

ジャンルを問わず一年中、映画漬けの生活を送っている、自称ゆるーい映画オタク⁉の私が

独断と偏見でオススメする今日の一本は、薬物中毒を題材にしたヒューマン・青春映画「トレインスポッティング」です。

 

引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

 

 

 

作品紹介

 

スコットランドを舞台に、薬物中毒の若者たちの日常を斬新な切り口で生々しく映像化した内容が、若者たちの間で一大ブームとなり、本国イギリスを中心としたヨーロッパを飛び越え、米国や日本でも大ヒットした話題作で、R-15指定。

 

リズムやビートが強調されたグルーヴ感と奇抜な映像センスをエンターテインメントな世界になじむよう処理をした、クールな手法が大うけしました。

また、印象的な蛍光オレンジ色のポスターも人気を集め話題となりました。

 

映画初主演で当時まだ無名だったユアン・マクレガーは、本作でイギリスの映画賞を総なめにする演技を披露するなど、彼の出世作にして代表作品となります。

 

世界的にヒットした、あの「28日後…」で監督を務めたダニー・ボイルが本作でメガホンをとり、主役のユアン・マクレガーとともに一躍時代の寵児(ちょうじ)となりました。 そして、アーヴィン・ウェルシュの小説を映画化し、原作者の彼自身も端役で出演しております。

 

本作から20年後の登場人物たちを描いた続編「T2 トレインスポッティング」は、2017年に公開されました。

 

引用元:YouTube公式より / トレインスポッティング:ワーナーブラザーズ公式チャンネル

 

見どころ&おすすめ

 

スクリーンに映る主人公レントンは、カタルシスがけっして成就することがない姿で一貫していました。 彼の周りは常にリスキーだけど、あと先考えない行動はしません。 そして、ただの楽観主義者でもありません。

 

悩むことなく、日常が永遠に続く境地に身をゆだねていくさまが、魅力的に映るのです。 ここが本作の最大の見どころポイントなのです。 

 

また、当時のイギリスの流行を反映した、古汚れたTシャツやコンバースのハイカットスニーカーなどのタイトなシルエットのファッション、90年代にイギリスで発生したポピュラー音楽のブリッドポップサウンドなど、ファッション、音楽など当時のイギリスカルチャーがぎっしり詰め込まれたところも見逃せないポイント。

 

そして、青春、若さの疾走感と人生の焦燥感に揺れ動く姿(さま)を、クールで斬新な映像で描写しているところも見どころで、この映画が大ヒットした要因です。

 

役作りのために13キロも減量したユアン・マクレガーの薬物中毒患者の演技や、凶暴なベグビーを快演したロバート・カーライルの存在も見逃せません。

 

公開時から20年以上経っても色あせない、映画が時代をつかんだエポックメイキングな傑作。

 

ただしR-15指定で、クスリ、暴力、汚さ、下品、下ネタなどの表現や描写が多いので、観る方を選ぶ作品かもしれません。 逆に、これらを笑い飛ばせる方、そして人生の選択について考える若者たちに、おすすめできる作品です。

 

非常に不快な描写があるので、くれぐれも注意してご鑑賞くださいね。

 

おすすめ度

 

★★★★☆             4点

 

主要キャスト・スタッフ

 

レントン (ユアン・マクレガー)
ベグビー (ロバート・カーライル)
ダイアン (ケリー・マクドナルド)
シック・ボーイ (ジョニー・リー・ミラー)
スパッド (ユエン・ブレムナー)
トミー (ケヴィン・マクキッド)
 

 

監   督 ダニー・ボイル
脚   本 ジョン・ホッジ
原   作 アーヴィン・ウェルシュ
製   作 アンドリュー・マクドナルド
 
 

 

1996年 公開   94分   アメリカ・日  本

 

登場人物たち

 

ここでは、登場人物のキャラクターを紹介します。

 

レントン


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

何度も断薬と再開を繰り返す薬物中毒の主人公。

安定と退屈の象徴である「大人」になることに抵抗し、クスリによる刹那的快楽に浸る人物であるが、一念発起してまっとうな人生を目指す。

 

ベグビー


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

アルコール依存症で、だれかれ構わず喧嘩を仕掛ける暴力的な性格で、まるで喧嘩中毒者。

ただ、仲間内で唯一薬物には手を出さない人物だが、犯罪に対して何とも思っていない危険人物でもある。

 

シック・ボーイ


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

トレントと共に行動することが多いが、彼もクスリを辞められない弱さを持つ人物。

そして、映画「007」オタクで女好きである。

 

スパッド


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

心優しく小心者で穏やかな性格の人物。 レントンの親友である。

すっかりクスリに溺れ、断薬が出来ない心の弱さを露呈する。

そして人に流されやすいタイプ。

 

ダイアン


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

酒にたばこ、セックスも問題ない、かなりぶっ飛んだ性格な彼女は、実は14歳の中学生!

ただ、意外にも家族との関係は悪くなさそう。

 

トミー


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

当初はベクビーと同様に、クスリには手を出していなかった仲間の一人。 

しかし、失恋をきっかけにクスリにハマっていく。 さらに悲惨なことにエイズに感染してしまう。

 

簡単な、あらすじ

 

引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

不況で全く仕事のない90年代のスコットランド。

 

アルコール依存症で、喧嘩が趣味のようなベグビー。 「007」オタクで女たらしのシック・ボーイ。 気のいい小心者スパッド。 酒にSEX、タバコもOKの女子中学生ダイアン。

レントンはそんな仲間たちと、いつもヘロインでハイになっているか、クスリを買うために盗みを繰り返す怠慢な生活を送っていた。

 

ある時、万引きで逮捕されてしまったレントンは、仲間たちの悲惨な現状と自分の置かれている現実に気がつき、断薬して更生を決意する。

 

苦労してドラッグ中毒を克服したレントンは、ロンドンに渡り不動産業の会社に就職する。 そして、普通の生活に退屈しながらも満足していた。

しかしある日、指名手配の仲間を匿(かくま)ったことがバレて、会社をクビになってしまう。

 

しかたなく地元に戻るも、そこで絶望的な事態が起きてしまい、彼らの友情も崩壊してしまう運命が近づいてくる。

 

そんな状況の中、レントンと仲間たちは、人生を変えるため大きな賭けに出るのだった。

はたして彼らはどんな未来を選ぶのだろうか・・・

 

引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

「トレインスポッティング」を徹底考察

 

かなりトンガった本作の隠された魅力を探っていきましょう。

 

タイトルの本当の意味は?

「トレインスポッティング」の意味は、鉄道マニアの活動を表す言葉だそうです。

直訳すると「鉄道オタク」という意味となり、イギリスで使われる俗語です。 ただ、本作には鉄道オタク的な要素は一切出てきません。

 

なぜこのタイトルなのだろう? 

 

現在はショッピングセンターとして再開発された場所ですが、当時のスコットランドの首都エジンバラの北部にあるリース地域には、鉄道の操車場がありました。 しかし廃線になってしまい、そのまま朽ち果てて放置されてしまったのです。

 

いつしか鉄道の廃車置き場が薬物中毒者のたまり場となっていました。 それ以来、この地域のローカルジョークとして「奴らはトレインスポッティングだ」と呼ばれるようになったのです。

 

つまり「トレインスポッティング」とは、薬物中毒者たちの隠語だったのです。

 

赤ちゃんが命を落とした理由は?

レントンたちがクスリを買ったり打ったりしていた部屋(修道院長の館)にいた赤ちゃん(ドーン)がある日、突然亡くなってしまいます。 本編では死因について語られておりません。

 

今まで元気だったのに突然の死。 口元に泡を吹いた痕跡がありました。

確証はありませんが物語の背景から想像するに、母親アリソンの母乳からの薬物接種による死亡ではないかと思います。

 

実際に2018年4月のアメリカで、このような事件があったそうです。

鎮痛剤依存症の母親が薬物を摂取した状態で、生後11週の男児に授乳しました。

母乳を通して致命的となる混合薬物を過剰摂取したために死亡したのです。

 

供述調書によると、夜中に泣き出した赤ちゃんに粉ミルクを準備するのが面倒だったからと母乳を与えたとのこと。

母体の体内に薬物が入った状態で授乳を行えば、赤ちゃんの体にも同じ成分が入ってしまうのです。

 

本作でのドーンの突然の死亡もこれと同様のケースだったのではないでしょうか。

アリソンは薬物を服用しながらドーンを育てていましたから、その影響を受けてしまったのでしょう。

 

薬物を摂取しながら子育てをすることが、いかに恐ろしく悲惨なことかを本作は伝えています。

 

下ネタ、犯罪、とにかく下品


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

絶望感を持つ登場人物たちが、クスリで日常を紛らわす、そしてそんな彼らの人生を見守るようなストーリーが展開されます。

当然、全員いい子ちゃんではありません。

犯罪行為に下ネタ、お下品などが多めに盛り込まれているのです。

 

お尻に入れた座薬型のクスリを下痢で落としてしまうシーン。 物凄〜く汚いトイレで排せつ音を響き渡らせたり、トイレに落としてしまったクスリを拾うため、排せつ後に便器に手を突っ込んだり、頭を突っ込んだり。

 

クスリをキメて、妙なテンションで面接に臨(のぞ)んだり、自分の失敗を他人に擦り付けてケンカを始めたり、当たり前に盗みを行なったりと、盛り沢山です。

 

大事なところは隠していますが、SEXシーンもたびたび映ります。

 

このような作風のためなのか、観ているこちら側の感覚がマヒしてしまい、本能丸出しの表現や犯罪行為などに不快な思いをあまり感じさせません。

 

ただ、人によっては受け付けないかもしれませんね。

この映画は観る者を選ぶ作品なのです。

 

当時のスコットランドの時代背景


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

山に行くシーンで、レントンが「この国はクソたれだ! 最低な国民。 人間のカスだ。 みすぼらしくて卑屈(ひくつ)でみじめで史上最低のクズだ」と叫びます。

さらに「みんなイギリスをバカにするが、そのイギリスの領土だ。 何の価値もない国を占領するような落ちぶれた国の子分だ」と吐き捨てるように言い放ちます。

 

これには、隠された時代背景があったのです。

 

グレートブリテン島の北部に位置するスコットランドは17世紀以降、イングランドの君主に統治され、1707年には正式にイングランドに併合されます。

 

1979年のイラン革命、そして1980年のイラン・イラク戦争により第2次オイルショックが起きました。 その影響に巻き込まれたイギリスは大変な不況となり、失業率が増加してしまいます。 当然、スコットランドやイングランドも同様の不況でした。

 

この2つの地域は製造業が盛んで「世界の工場」を担う地域で、とくにスコットランドは1970年頃から不遇の時代が続いており、失業の嵐が吹き荒れていたイングランドよりも状況ははるかに酷かったのです。

 

しだいにイギリスは回復へと向かいGDPは回復しますが、製造業に対する配慮が少なかったため、この地域は取り残され、職を失った人々はその恩恵にあずかることができませんでした。

 

本作では、ロンドンの美しい部屋や街並み、そして忙しそうな人々とスコットランドの吐きそうなほど劣悪なトイレなど、ロンドンとスコットランドの比較が一目瞭然でした。 そう言えば、彼らの家やたまり場も、とてもきれいな所ではありませんでしたね。

 

レントンたちの未来に対する希望が、絶望的だという背景がここから分かります。

現実逃避から、ひたすらクスリに興じる。

この時代背景を知って鑑賞すると、さらに深く物語に入り込めますよ。

 

リアルな演技


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

役作りのために約13Kgも減量してレントン役にのぞんだユアン・マクレガー。

体型だけでなく、目つきや息づかい、動きまでも中毒患者そのもので、ヘロインの注入や吸引するシーンがやたらリアルでした。

 

このこだわりのため、彼は更生施設を訪れて、扱い方などを研究したそうです。

だから演技にしてはとてもリアルだったのですね。

彼の演技魂には脱帽します。

 

メタドンとヘロイン

メタドン(=メサドン)は、化学合成によって作られたオピオイド系の鎮痛薬です。

 

麻薬性鎮痛薬として利用され、モルヒネ系薬剤よりも持続時間が長く、常習性が少ない薬です。 しかし、日本ではメタドンは麻薬の1つに分類され、麻薬取締法の規制を受けます。

 

本作では、ヘロイン中毒患者の治療薬として使用されておりますが、ヘロイン中毒を麻薬でごまかすような荒治療です。 また、メタドンの過剰な服用により死亡事故も発生します。

 

レントンの母親が「メタドンは良くない」と話しており、病院ではなく自宅で強制的に断薬したことも理解できます。

 

ヘロインもオピオイド系の鎮痛剤のひとつです。

このクスリは、薬物の危険性を最高3点と数値化した場合、快感3点、精神的依存度3点、身体的依存度3点と依存性が最高の3点となる唯一の薬物。

 

つまりとても危険な薬物だということ。

 

当然、日本国内では麻薬及び向精神薬取締法によって、製造・所持・使用が厳しく制限されております。 また、このヘロインを医薬品として認可している国はありません。

 

ヘロイン注射は緊張感を著しく低下させ、眠気のあとに強い陶酔作用、耐え難い欲求を起こす作用がありますが、禁断症状になると、快楽を得たい精神的依存、耐え難い関節などの痛み、激しい嘔吐などの身体的依存が起こります。

 

モルヒネと比べると、鎮痛・麻酔作用が強い反面、毒性は10倍ほどで、中毒性はモルヒネよりも強く、中毒者は狂暴化してしまう。

中毒に陥りやすく、摂取量を間違えると死亡する場合があります。

 

つまり「1回でもヘロインを使用すると止められなくなる」、そして繰り返しクスリに手を出してしまう、恐ろしいクスリなのです。

 

「トレインスポッティング」のトリビア

 

ここで本作を深掘りしてみましょう。

 

超有名グループへのオマージュ


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

4人がロンドンへ行き麻薬組織と取引に向かうとき、優雅にカバンを持ちながら街を歩いているシーンが出てきます。

何か見覚えありませんか?

 

そう、ビートルズの「アビーロード」を意識したカットでした。

ビートルズへのオマージュであり、なかなか気の利いた演出です。

 

ダイアン14歳、実は・・・


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

設定上、ダイアンは14歳。 日本でいえば、義務教育真っただ中の中学生です。

彼女の年齢を知ったレントンが大慌てになるのも無理ないですね。

 

ただ、ダイアン役のケリー・マクドナルドは、撮影時の年齢が19歳だったのです。

設定年齢よりも5歳も上だったなんてビックリ。

 

それにしても彼女、制服姿が良く似合いますね。

 

原作者が登場するシーン?


引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

原作者のアーヴィン・ウェルシュがチョイ役で本作に登場します。

 

マイキー・フォレスターというキャラクター名で、レントンに座薬タイプのヘロインを渡す役を演じていました。

 

感  想

 

 

引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

冒頭で、「人生を選べ、仕事を選べ、キャリアを選べ、家族を選べ、大型テレビを、洗濯機を、クルマを、未来を選べ・・・ だけど、それがいったい何なんだ?」と、レントンたちは観客に問いかけます。

 

そして、彼らが選ぶのはただ1つ「ヘロイン」。

 

きっと彼らには選択肢がないのでしょう。

希望がなく現実から逃避するため、クスリにはまる。

快楽と汚物にまみれた彼らの人生は、あまりにも刹那的で胸が苦しくなります。

 

肥溜めの中にいるような退廃的で灰色の人生を、パステルカラーを基調としたポップでスタイリッシュでクールな映像で表現したギャップが、印象的であり魅力的でした。

このギャップこそがこの作品をヒットさせた要因でしょう。

 

イギリスを代表する作品だし、ダニー・ボイルの最高傑作だと思います。

そして続編にも期待ですね。

 

この映画を観て思ったのは、薬物中毒患者や若者の犯罪にフォーカスした単純な作品ではありませんでした。 登場人物たちの迷い・葛藤・不安・動揺が入り混じって、いかにも人間らしさを全面に押し出した感慨深い作品なのです。

 

さらに、他国や他者への劣等感を持つスコットランドの闇を知ることになり、なかなか奥深い世界観に触れ、色々と考えさせられました。

 

時代背景はあるでしょうが、クスリが身近にない日本に比べて、タバコを吸うような感覚でクスリを打つ主人公たち。 ちょっと禁煙するレベルで断薬をするも、すぐ断念してクスリを打つ依存性の高さ。 そして、まだエイズ(HIV)感染症が克服されていない時代。

 

そんなクスリが身近にある光景や注射を打つリアルな描写に衝撃を受け、改めてクスリの怖さを思い知りました。

 

自分もそうですが、是非みなさんはこの映画を教訓にして、人生の選択に失敗しないことを切に願います。

この映画は「人生の選択」について考える良い機会を与えてくれました。

 

最後に。

何とかクスリを止められて、HIVの感染もなかった、たまたま運のいいレントン君。

仲間を裏切って大金を持ち逃げした君に、はたして「普通の生活」が送れるのだろうか。 いつか仲間と再会し、またクスリを打ち、悪さを繰り返すような気がしてならないのだが・・・

 

引用元:トレインスポッティング / © Channel Four Television Corporation MCMXCV

 

 

 

 

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