ジャンルを問わず一年中、映画漬けの生活を送っている、自称ゆるーい映画オタク⁉の私が
独断と偏見でオススメする今日の一本は、サイコ・スリラー系の「アイデンティティー」です。
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
作品紹介
2003年にアメリカで製作されたサスペンス作品で、外部と遮断されたモーテルを舞台に繰り広げられるミステリー事件(クローズド・サークル)ものです。
激しい雨が降り注ぐ中、あるモーテルに集まった男女が1人また1人と殺害され、死体までもが消えてしまう。 それと同じ時に、ある殺人死刑囚の再審議が行われており、一見関係ないないように見えるこの2つの話は、やがて密接なかかわりを持っていく・・・
2003年4月25日にアメリカで公開され、週末興行成績で初登場1位となり、トップ10内を5週間も維持した優秀な作品です。
監督は、「ナイト&デイ」、ヒュー・ジャックマン主演の「ウルヴァリン:SAMURAI」、そして2023年に公開され話題となった「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」で手腕を発揮した、ジェームズ・マンゴールドが務めました。
主人公のエド役には、「マルコヴィッチの穴」や「2012」など、年々癖のある役を演じているジョン・キューザックがこの作品でさらに魅せてくれます。
引用元:YouTube公式より / Identity (2003) Official Trailer 1
見どころ&おすすめ
伏線がいたるところに散りばめられ、殺人と死体消失の謎や、舞台となる嵐のモーテルにさらなる意味が重なり、視聴者を間違った答えへと誘導する展開は、物語全体が周到に計算された脚本で成り立っているところが、この作品の最大の見どころです。
誰がなんの目的で殺人を犯したのか、死体がなぜ消えたのか、という謎に焦点を当て、誰が犯人かを視聴者が推理する楽しみや、予想外のクライマックスでその正体が明らかになる展開は、観ている側にさらなる興奮と満足感を与えてくれます。
そして、犯人が分かった上での再鑑賞は、また新たな発見が見つかるなど、何度でも楽しめる作品となっているところもポイントです。
ミステリー好きで、謎を推理するのが好きな方には、とくにおすすめの作品です。
誰が犯人かを、複数人で推理し合いながら鑑賞するのも面白いかと思いますよ。
アイデアと細部まで徹底的に作りこまれたこの作品を、まだ観たことがない映画好きの方には、ぜひとも観ていただきたいおすすめの一本です。
みなさん、本作を激しい雨の日に観てはいかがでしょうか。
モーテルの窓を打つ雨音が現実世界とシンクロして、気づかないうちにあなたも彼らの世界に引きずり込まれるかもしれませんよ。
おすすめ度
★★★★☆ 4点
主要キャスト・スタッフ
エド・ダコダ (ジョン・キューザック) |
カロライン・スザンヌ (レベッカ・デモーネイ) |
サミュエル・ロード (レイ・リオッタ) |
ロバート・メイン (ジェイク・ビジー) |
パリス・ネバダ (アマンダ・ピート) |
ラリー・ワシントン (ジョン・ホークス) |
ジニー・バージニア (クレア・デュヴァル) |
ルー・イジアナ (ウイリアム・リー・スコット) |
ジョージ・ヨーク (ジョン・C・マッギンリー) |
アリス・ヨーク (レイラ・ケンズル) |
ティミー・ヨーク (ブレッド・ローア) |
マルコム・リバース (プルイット・テイラー・ヴィンス) |
マリック医師 (アルフレッド・モリーナ) |
他 |
監 督 | ジェームズ・マンゴールド |
脚 本 | マイケル・クーニー |
製 作 | キャシー・コンラッド |
製作総指揮 | スチュアート・ベッサー |
他 |
2003年 公開 90分 アメリカ・日 本
モーテルに集まった人物?たち
エド・ダコタ
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
カロラインの運転手で、元ロサンゼルス市警察の警察官。
メキシコ人女性の自殺を止められなかったことから精神を病んで、警察官として6年間働いてきたが、現在は病気により休職中。
3号室に宿泊する。
カロライン・スザンヌ
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
落ち目の女優で、エドの雇い主。
わがままで、よくトラブルを起こす人物。 仕事のため、エドとロサンゼルスに向かう途中だった。
8号室に宿泊する。
サミュエル・ロード
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
囚人を護送中の刑事。
ネバダ州の刑務所に向かっていたが、実は彼も囚人で、本物の刑事を殺して成り代わっている。
10号室に宿泊する。
ロバート・メイン
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
護送中の囚人で、連続殺人犯。
10号室のトイレに監禁されるが、なんとか脱出するも、意図せずにモーテルに戻ってきてしまう。
パリス・ネバダ
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
娼婦。
ラスベガスに住んでいたが、故郷のフロリダ州ポーク郡フロストプルーフに帰る途中だった。 果樹園を作ることが彼女の夢である。
7号室に宿泊する。
ラリー・ワシントン
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
舞台となるモーテルの支配人。
娼婦嫌いで、パリスには強く当たってしまう。 実際は、ラスベガスで無一文になってしまうほどのギャンブラー。
本当の支配人は、ラリーがモーテルに来た時には死んでいたと話す。
ジニー・バージニア
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
ルーの妻。
ヒステリックな性格で、妊娠と偽ってルーに結婚を迫る。
夫ルーと共に6号室に宿泊する。
ルー・イジアナ
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
ジニーの夫。
女好きな男性で、ジニーから妊娠を知らされ、数時間前に彼女と結婚した。
6号室に宿泊する。
ジョージ・ヨーク
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
アリスの夫。
クルマを運転中、道路に落ちていたパリスの靴を踏んで、タイヤがパンクしてしまう。
家族で4号室に宿泊する。
アリス・ヨーク
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
ジョージの妻。
夫ジョージがタイヤを修理しているとき、エドが運転するクルマに轢(ひ)かれてしまい重傷を負う。
4号室に宿泊する。
ティミー・ヨーク
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
アリスの連れ子。
2年前に家を出た実父に暴力を振るわれた影響からか、あまり他人と口をきかない。
その他の登場人物
マルコム・リバース
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
死刑執行前夜を迎えた死刑囚。
4年前に6人を殺害した。 母は娼婦で、幼少期にモーテルに置き去りにされ、さらに虐待が原因による解離性同一性障害(昔でいう多重人格)となってしまった。
マリック医師
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
マルコムの担当医で精神科医。
マルコムが解離性同一性障害の病気である事を主張し、死刑執行に反対している。
簡単な、あらすじ
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
死刑囚マルコム・リバースの死刑執行の前夜、彼の死刑執行について再審議が行なわれようとしていた。
一方、時を同じくして激しい雨が降り続く嵐の夜、辺鄙(へんぴ)な場所にポツンと立つ一軒のモーテルがあった。 そこの支配人ラリー・ワシントンが、くつろいでいると、男が飛び込んできた。
交通事故で妻アリス・ヨークが大けがを負って助けを求めに来た夫ジョージ・アリスと息子ティミー・ヨークだった。 救助を呼ぼうとするも、この嵐で電話は不通となっている。
アリスを轢(ひ)いたのは、女優カロライン・スザンヌの雇い主で運転手のエド・ダコタだが、急いで病院へ向かおうとしたものの、悪天候のためモーテルに引き返してきたのだ。
さらに、この雨で囚人ロバート・メインを護送していた刑事サミュエル・ロード、娼婦のパリス・ネバダ、そして結婚したばかりの夫婦ルー・イジアナとジニー・バージニアの10人は身動きが取れず、このモーテルに集まってきたのだった。
偶然居合わせただけの彼らは、いつの間にかカロラインが無残に殺害されていることに気づき騒然となる。 そして今度は、ルーが殺されていた。
それぞれの殺害現場には部屋番号の書かれた鍵が、10、9とカウントダウンするように残されていたのだ。 そして、次に殺されたロバートの足元には8号室の鍵があった。
次に誰が殺されるのか、犯人は誰か、残された誰もが疑心暗鬼になる中、彼らにはある共通点があることに気がつく。
さらに同時進行で、審議が進んでいる死刑囚マルコムともある共通点が・・・
これらすべてが繋がったとき、衝撃のクライマックスが待っている。
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
以下はネタバレが分かってしまう内容です。
できれば作品をご覧になってから、お読みになることをおすすめします。
「アイデンティティー」の謎を考察
ここでは、本作の隠された謎を深掘りしていきましょう。
クローズドサークル系の作品
激しい雨によって、モーテルに閉じ込められてしまう登場人物たち。
観ている側には、最後までその全貌が分からないストーリー構成は、かなり巧妙に作られたクローズドサークル系のミステリー作品です。
クローズドサークル系ものといえば、アガサ・クリスティの名作「そして誰もいなくなった」が有名です。
この本作「アイデンティティー」も、そのクローズドサークル系作品の中では上位にランクインされるべき名作。
そういえば、以前このブログで取り上げた「CUBE/キューブ」も、クローズドサークル系のミステリー作品でした。
数々の伏線
死刑囚マルコムとマリック医師との会話が、物語序盤に流れます。
そこで、マルコムが解離性障害であることや誕生日などが明らかにされます。
これが伏線となっていました。
一方、中盤以降でモーテルの男女の誕生日が、マルコムと同じ誕生日だと分かったことにより、事件の真相に一歩近づきます。
察しの良い視聴者なら、ピンときた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、マルコムは幼いころ娼婦だった母親からモーテルに置き去りにされたつらい過去を持っています。 実はモーテルでの出来事は、解離性障害をもつマルコムの頭の中だったという意外性の伏線回収でした。
娼婦のパリスの存在も伏線でした。 多分、娼婦だった母親を連想させ、最後の最後に天国から地獄に突き落とした所業は、自分を捨てた母親への強い恨みが込められていたからでしょう。
無線を使わせなかったり、シャツの背中に穴が空いているのは、偽刑事の証拠。 そもそも刑事サミュエル役を演じたレイ・リオッタの顔が、悪人顔(オッと失礼)でとても刑事には見えませんでした。 この配役も伏線かなぁ〜?
ジニーが「そして誰もいなくなった」を口にします。
これは、ある共通点をもった10人が次々と殺されていく推理小説ですが、この内容を知っている方には、このセリフが伏線となるでしょう。
さらに、登場人物の名前の謎など、伏線がいたるところに散りばめられており、それらを見つけるのも本作を楽しむひとつですよ。
ミスリード
死刑囚マルコムを審議する日は、雨の夜。 そして、嵐の中のモーテルでの出来事も嵐の夜。
どちらも同じ雨のシチュエーションによって、同時に物語が進行しているかのような錯覚。
別人格を扱う場合、自分以外には見えていないパターンが多いのですが、今回は登場人物全員が見えているという認識から、まさか別人格たちのストーリーだとは想像もできない盲点。
普通は犯人が子供だとは、なかなか考えませんよね。 しかも、子供が大人を殺すには体力的に無理があります。 ただそこは、意識の中なので、何でもできますよね。
子供という事が、大きなミスリードを誘います。
死体は確認できませんでしたが、爆発で死んだと思わせておいて自分を死亡扱いにして疑惑からそらしたのも、ミスリード。
最初は護送中の犯人ロバート、次に偽支配人のラリー、そして偽刑事のロードが怪しいと次々に犯人へと誘導するストーリー展開は、誰もが間違った方向に導かれてしまいます。
これらのことから、とても子供が犯人だとは、悟られないミスリードへと導く緻密な計算はお見事でした。
名前の意味は?
モーテルに登場する彼らの人格には、最初から名前や誕生日はありませんでした。
マリック医師が便宜上、州の名前と5月10日というマルコムの誕生日を彼らに植えつけました。
理由は、この共通点に気づいた人格を現実世界に呼び出し、殺人鬼の人格を殺させるために行ないました。
マルコム・リバースの名前にも秘密があります。
死んだと思われた人格が、マリック医師を殺害してマルコムは殺人鬼として戻ってきてしまいした。 殺人者の人格を抹殺しようとしたのに、逆にその人格だけが残ってしまったのです。
殺害の相関関係
ここで、誰が誰に殺害されたのかを、整理してみましょう。
被 害 者 | 犯 人 | 動 機 | 殺 害 方 法 |
カロライン | ティミー | 憎悪 | ナイフ?による刺殺 |
ルー | ティミー | 憎悪 | ナイフによる刺殺 |
ロバート | ティミー | 憎悪 | バットによる刺殺 |
ジョージ | ラリー | 事故 | クルマでの圧死 |
アリス | ティミー | 憎悪 | 口をふさいで窒息死 |
ジニー | ティミー | 憎悪 | 爆発による爆死 |
ラリー | サミュエル | 口封じ | 射殺 |
サミュエル | エド | 防衛手段 | 射殺(同士討ち) |
エド | サミュエル | 口封じ | 射殺(同士討ち) |
パリス | ティミー | 憎悪 | 鍬(くわ)による撲殺 |
マリック医師 | マルコム | 憎悪 | 鎖による考察 ※現実世界 |
感 想
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
え、殺人?何で?誰が?次は?、なぜ死体が消える?、それと死刑囚との関連は?、謎だらけで頭の中が???で崩壊しそうでした。 大げさかぁw
この「アイデンティティー」は、閉ざされた空間で繰り広げられる連続殺人事件で、それがミステリータッチで展開していく面白さ(怖さ?)と、犯人は誰なのかを推理(フーダニット)する楽しみがある、よく考えられた見ごたえバツグンの内容でした。
死刑囚の再審議が現実で、嵐のモーテルが頭(意識)の中での出来事。 多重人格を頭の中で争わせるなんて、なかなか思いつかない斬新な発想ですよね。
さらに、ふたつの話をあたかも同時進行で進む現実の物語として見せる演出が、実に素晴らしく脱帽もの。
そして、そのふたつの物語が中盤以降で少しずつ明かされていき、まさかの展開には驚きしかありませんでしたね。 徐々に謎が明かされていきますが、少しも興味がそがれることなく物語は進み、クライマックスでは二度にわたる衝撃を受けるこの結末は、圧巻の一言、お見事です!
はじめての鑑賞ではなかなか気づきませんが、再度鑑賞するとこの作品のディテールが細かいところまでよく考えられていることが分かります。 違和感や無理やりなところがなく物語が展開していく脚本の素晴らしさに感心してしまいました。
個人的には、最後にビックリする衝撃の「どんでん返し映画」で印象に残る作品に、「シックス・センス」や「ソウ/SAW」などが記憶に残っておりますが、この作品もそれらに負けないくらい印象に残る作品、高ランクの良作。
映画って、素晴らしいなぁと改めて実感した作品でした。
この映画を観たことがない映画好きな方は、ぜひ観るべき作品のひとつですよ。
あ!でも、ここまでこのブログ読んでしまったら、驚き度合いが半減してしまうなぁ〜!w
引用元:アイデンティティー / © 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES. INC. ALL RIGHTS RESERVED.