映画「CUBE/キューブ」 深掘り カナダの鬼才が放つ、ゲーム感覚のスリラー系サスペンス

ジャンルを問わず一年中、映画漬けの生活を送っている、自称ゆるーい映画オタク⁉の私が

独断と偏見でオススメする今日の一本は、サスペンス・スリラー映画の「CUBE/キューブ」です。

 

引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

作品紹介

 

眼が覚めると謎の立方体、CUBE(キューブ)の部屋に捕らわれている数人の男女。

 

誰が、何の目的で、彼らを閉じ込めているのか分からないまま、死のトラップが張り巡らされたこのキューブから、彼らは決死の脱出を試みる。

 

はたして彼らは、無事にキューブから脱出できるのか?

 

トラップが仕掛けられた、立方体(キューブ)で構成された謎の迷宮。

突如放り込まれた男女6人の脱出劇を描いています。

 

1997年製作、当時無名なカナダの映画監督ヴィンチェンゾ・ナタリのデビュー作で、「ひとつのセットで、登場人物が7人」という低予算の作品です。

冒頭から終始、緊張感の張り詰めた中で物語が進行していきます。

 

この作品は低予算で製作されたにも関わらず、カルト的な人気を誇ります。

この映画の人気にあやかり、いくつもの類似作品が出回るほどの有名作品となりました。

 

正式な続編に「キューブ2」「キューブ ゼロ」があります。 しかしナタリ監督は、それらの作品を手がけてはおりません。

 

また、2021年10月には日本で、菅田将暉主演のリメイク版「CUBE 一度入ったら、最後」が公開されました。 この作品は、ナタリ本人がクリエイティブ協力で参加した初の公認リメイク作品となりました。

個人的にですが、ナタリ監督の手がける作品の中で「スプライス」という作品がありますが、これも大変お気に入りです。 ぜひ機会があれば紹介させて下さい。

 

このYouTubeは、年齢制限のある動画となりますので、ご注意ください。

引用元:You Tube公式 / CUBE(キューブ)

 

見どころ&おすすめ

 

この「CUBE/キューブ」は、スリラー、SF、サスペンス、犯罪、スプラッターなど数々の要素を取り入れた作品です。 

 

さらにこの作品は、見事に人間性までも描いたシンプルにして、とてもシャープで驚くほど明確、そして斬新でいさぎよい作品なのです。

 

また、ソリッドシチュエーションスリラーの元祖とも言うべき作品で、この映画をきっかけに、様々な作品が生み出されてきました。

この手の作品と言えば、まずは「CUBE/キューブ」を観なければ始まりませんね。

 

物語がはじまってから、ん?なに?エッ??の連続。 この発想は凄い、脚本もまた素晴らしい!

 

ちなみに、ソリッドシチュエーションスリラーとは?

主人公や登場人物が、ある空間に閉じ込められたり、意図しない状況に立たされたりするなど、危機的な状況をどう打開するかを描いた恐怖映画のことを言います。

 

個人的には、今回取り上げる「CUBE/キューブ」と双璧をなす代表作品に「SAW/ソウ」を挙げますが、この作品はまた次回にでも。

 

冒頭からいきなりスプラッター要素がさく裂し、相当怖いスリラー感を視覚的に見せつけてきます。 死のトラップが立方体(キューブ)内に仕掛けられ、1つの扉の向こうには何があるのか?どんなトラップが待ち受けているのか?観ているこちらを恐怖に落とし込む演出は見どころです。

 

また、キューブ内部のデザインは、幾何学的な模様で描かれ、各キューブとも違う過激な色調でこちらの精神を不安定にさせる。 そして、中に閉じ込められた閉塞感で息が詰まる感覚を味わえるところもポイント。

 

さらに、この映画を面白くしているのは、サスペンス要素を取り入れたキューブからの脱出劇。 そこに数学を取り入れた仕掛けは、なかなかユニークで面白い要素です。

 

そんな状況が終始展開され、全く先が読めない、ハラハラドキドキしっぱなしの90分間に、あなたは耐えることができるでしょうか?

 

新感覚ゲーム的サスペンスに興味がある方には、おすすめです。

また、ソリッドシチュエーションスリラーが好きな方は、元祖的作品なのでぜひ観てほしい作品です。

 

部屋を暗くし、ひとりでのご鑑賞をおすすめします。

 

おすすめ度

 

★★☆☆☆             2点

 

主要キャスト・スタッフ

 

クエンティン (モーリス・ディーン・ウィント)
ハロウェイ (ニッキー・グァダーニ)
レブン (ニコール・デ・ボア)
レン (ウェイン・ロブソン)
ワース (デヴィッド・ヒューレット)
カザン (アンドリュー・ミラー)
オルダーソン (ジュリアン・リッチングス)
 

 

監   督 ヴィンチェンゾ・ナタリ
脚   本 ヴィンチェンゾ・ナタリ
  グレーム・マンソン
  アンドレ・ビジェリク
製   作 メーラ・メー
  ベティ・ノーラン
  リンダ・オア
製作総指揮 コリン・ブラントン
   
 

 

1997年 公開   90分   カナダ

 

1998年 公開   90分   アメリカ・日  本

 

簡単な、あらすじ

 

引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

数人の男女が眼を覚ますと、そこは謎の立方体、CUBE(キューブ)の部屋の中だった。 どうやらこの部屋に閉じ込められているようで、メンバー全員はお互い面識が一切なかった。  

 

年齢や職業などバラバラで、誰の仕業で、なぜここに閉じ込められているのか、全員かいもく見当がつかない。

ただ全員に共通していることは、同じ服と靴を身に着けていることぐらいだった。

 

訳もわからず、みんな困惑していたが、とにかくこの施設からの脱出を試みることに。

 

どうも部屋の先にも同じ部屋があり、部屋同士を扉ひとつでつながっている模様。

しかも隣の部屋へ行く扉は、各壁面中央にひとつずつあり、合計6個の部屋とつながっているようであった。

 

しかしある部屋にはトラップが仕掛けてあり、それも部屋によって違うトラップがあるようだ。

ただこのトラップは、人間を殺すのが目的のトラップだったのだ。

 

部屋と部屋をつなぐ扉近くには、謎の数字が刻んであり、これにはどうやら何かの法則があるようなのだが・・・

 

思うように移動できないため、次第にいら立ち、精神状態が不安定になっていくメンバーたち。

 

はたして彼らは、無事にこの施設から脱出することができるのだろうか?

 

登場人物の紹介

 

クエンティン


引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

黒人男性で、職業は警察官。 妻とは別居中で、3人の子供がいる。

 

責任感があり、リーダー的にメンバーを引っ張っていくが、極限状態になると、利己的な性格をあらわし、凶暴で独善的な行動を取るようになる。

 

ハロウェイ


引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

中年の独身女性で、職業は精神科の開業医。

 

終始不機嫌な態度をとる偏屈な性格だが、障害のあるカザンの面倒をみる博愛的な一面をもつ。 その性格ゆえ、利己的なクエンティンと常に衝突している。

 

レブン


引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

数学科を専攻している女子大生で、毎日退屈でつまらない学生生活を送っている。

 

各扉にある数字の法則に気づき、キューブの謎を解読する才能を発揮する。

 

レン


引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

小柄な初老の男性で、6つの刑務所から脱獄し、「アッティカの鳥」の異名をもつ。

 

常に目の前のことだけに集中し、無駄なことはしない合理主義者。

 

ワース


引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

無気力な独身男性で、この施設(CUBE)の外壁の設計者。

 

脱出に真剣みがないため、自分たちをここに閉じ込めた者のスパイではないかと疑われる。

 

カザン


引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

コミュニケーションに障害を持ち、サヴァン症候群のため数学的な能力に秀でている青年。

 

キューブの謎、素数の因数分解を瞬時に解き、CUBEからの脱出に活躍する。

 

オルダーソン


引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

物語の冒頭に登場する、スキンヘッドの男性で、死のトラップ最初の犠牲者。

 

「部屋にはトラップが仕掛けられていて、むやみに動くと危険!」という設定を強烈に印象づけている。

 

「CUBE/キューブ」のナゾを深堀します

 

「素数」って?


引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

部屋と部屋をつないだ通路に、3ケタの数字が3つ刻印されたプレートが貼られていました。 例えば「123、456、789」と刻印されていました。

 

その数字を手掛かりに、トラップのある部屋かない部屋かを判断できる、と考えたメンバーのレブンが思いついたのが、素数でした。

 

そもそも「素数」って何なんでしょう。

 

「1より大きい自然数で、正の約数が1と自分自身のみであるもののこと」

つまり、1と自分自身以外では割り切れない数は、素数ってことです。

 

3は、1と3でしか割り切れませんから、素数です。

6は、1、2,3,6で割り切れるので、素数ではありません。

 

この3つの数字のどれかに、素数が含まれていると、その部屋にはトラップがあると判断したのです。

 

今度は「因数」って?

レブンは素数の推論が破綻すると、今度は因数を使った推論を考えだしました。

 

それでは「因数」とは。

 

整式が、いくつかの整式の積の形で表されているとき、その各構成要素を言います。 これ、何を言っているのか分かりませんね。

 

例えば、21という数字。 これを掛け算に直すと、7×3になります。

よって、21の因数は、7と3となります。

 

もう一つ例えば、a²-a とあったとします。 これを掛け算にすると、a×(a-1)となります。 ※ 中学用数学の理解があれば、なんとか解けます。

よって、a²-a の因数は、a と a-1 となります。

 

つまり因数とは、数字や文字式を「かけ算」になおせば、因数がでてくるのです。

 

数字の3つ目のナゾ

「素数」「因数」これらは、トラップの有無の推論でした。

 

しかし、この施設の外壁を設計したというワースからの情報で、分かったことがありました。

それは、外壁の1辺の長さが、130mという大きな立方体の施設の中に居るということ。 そして、両端には8.4mの空間が空いているということでした。

 

各キューブの1辺が4.2mということから、(130m −(8.4m×2)÷4.2m)=26.95 

1辺に26個の部屋があることが分かりました。

全体では、26×26×26で 17576個もの部屋があることが考えられます。 どんだけの数だ!

 

そこからさらに推察して、プレートに印字されている、例えば「123、456、789」は「x、y、z」の座標を表していると考えました。

「123、456、789」は「1+2+3、4+5+6、7+8+9」で、「6、15、24」となります。

 

しかし、9+9+9 もありえるので、27となってしまい26個と矛盾します。

そこから、27番目の部屋が出口につながる部屋だと推察したんです。

 

この極限状態の中で、凄い推察力です。 いや、逆に極限状態だからこそ出る「火事場の馬鹿力」だったのでしょうか。

 

この施設のナゾ

結局、この作品「CUBE/キューブ」の目的は最後まで明かされませんでした。

 

誰が何の目的で、この施設を作ったのでしょうか?

施設の大きさから推察すると「政府の極秘施設」「軍事関係の実験室」などと想像してしまいます。

 

この物語最大のナゾにフォーカスするのは、あまり意味がないのかもしれません。

それを考えること自体が、キューブに閉じ込められたメンバーと同じ思考になってしまい、ナタリ監督のトラップにはまってしまうことになるのかも・・・

 

人間は、理不尽な状況に追い込まれると、何かしらの理由を探し納得することで安心感を得ようとします。

 

想像の上を行く理解不能なことほど、怖いものはないのですからね。

個人的にはナタリ監督が、この部分を表現したかったのでは、と感じました。

 

CUBEの内部構造


引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

分かっているCUBEの内部構造は、以下になります。

 

・1辺が約4.2mの立方体の小部屋で、上下四方の6面に全く同じ構造・デザイン  の小部屋がある。

 

・各一面中央には、各部屋をつなぐ扉があり、扉近くには3ケタの3種類の数字が刻 印された謎の金属プレートが埋め込まれている。

 

・壁の全面が発光パネルとなっており幾何学的な模様が浮き出ており、発光パネル の色は、白、赤、青、緑、オレンジなど様々で、色が意味しているところは、不 明。

 

・数ある小部屋の中にはトラップが仕掛けられた部屋があり、トラップの種類も数 種類ある。 (可動式ワイヤー、ガスバーナー、溶解性の薬品、無数の針など)

 

・トラップを動かすセンサーも各種ある。

 (加圧・振動式センサー、集音センサー、接触式センサー、分子探知式セン   サーなど)

 

登場メンバーの名前を深掘り


引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

キューブに閉じ込められたメンバーは、7名の男女で、性別、人種、職業などバラバラな人間が選ばれている。

しかし、登場人物の名前には、実在する刑務所の名前に由来していました。

 

・クエンティン ➡ サン・クエンティン州立刑務所(アメリカ)

 

・ハロウェイ ➡ ハロウェイ城(女性や若年層を収監、イギリス)

 

・オルダーソン ➡ オルダーソン連邦刑務所(アメリカ)

 

・レン ➡ レンヌ女性刑務所(フランス)

 

・カザン ➡ カザンの街の監獄(ロシア)

 

・レブンとワース ➡ レブンワース連邦刑務所(アメリカ)

 

そういえば、登場人物のレンは、7つの刑務所から脱獄し、「アッティカの鳥」の異名を持つ脱獄囚の設定でした。

 

なぜ、彼一人だけが生き残ったのでしょうか?

最後に、カザンは無事にキューブから脱出できました。

捕らわれのメンバーの中で、彼だけが外の世界に足を踏み出せた人物です。

 

なぜ彼だけが、生き残れたのでしょう。

他のメンバーと彼との大きな違いは、彼が障がい者だったことです。

 

人の価値観や個々の能力などは、その時の環境や状況によって大きく変わります。

 

健常者で体力のある人、IQが高い人などが、必ずしも競争で勝ち残るとは限らない、約束されていないということを、カザンを通して表現しているのではないかと想像しました。

 

キューブの施設を刑務所、キューブ内部の小部屋が独房、そして閉じ込められたメンバーは囚人という見立てなのでしょうか。

 

感  想

 

引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

90分間、延々と立方体(チューブ)の部屋を観させられます。 

 

単調だけど間延びすることすらない物語の進行具合は、登場人物たちのキャラクターとその精神状態の変化、そして数学というレトリックを使うアイデアなど、脚本の素晴らしさが活かされているからだと思います。

 

また、途中で飽きることなく鑑賞できるのも、こちら側が閉じ込められたかのような閉塞感で息苦しくなるような錯覚や、観ているこちらの感情を不安定にさせる感覚を味わえるからでしょう。

 

登場人物のひとりクエンティンは、警察官ということもあり最初は頼もしいリーダー役で、みんなを引っ張っていくキャラクターだと思ったら、あまりの変貌にビックリ! 

 

クエンティン、キミは精神的に打たれ弱いのか、見掛け倒しだな。

 

しかし、数分後には自分が死んでしまうかもしれないという極限状態におかれたら、と考えると・・・

 

その時の人間の本性なんて、その時になってみないと本人にも分からないものなのでしょう。 そこが上手く表現されていて、人間の恐ろしさを再確認させられました。

 

日本での公開が1998年ということで、当時はこの手のスリラー映画は少なかった時代です。

 

一つのセットを使いまわしし、しかも登場人物はたった7人、かなり低予算の製作費で作られた本作は、大変斬新で奇想天外な設定が印象的です。

個人的にかなりの衝撃を受けた作品です。

 

最後に。

映画とは、人間性を表現させるのには、最高の表現ツールの一つだと思います。

この映画を観ると、それが良く分かる作品です。

 

あなたも90分間、このキューブに閉じ込められてみて下さい。

ひょっとしたら、自分の本性が見えるかもしれませんよ!

 

 

引用元:CUBE / ©MCMXCCII CUBE/LIBRE/THE FEATURE FILM PROJECT. ALL RIGHTS RESERVED.

 

 

あらすじは、別サイトです。
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