映画「グラディエーター」 実話 時はローマ帝国時代、剣闘士の生死を空前のスケールで描いた大作

ジャンルを問わず一年中、映画漬けの生活を送っている、自称ゆるーい映画オタク⁉の私が

独断と偏見でオススメする今日の一本は、古代ローマを舞台にしたアクション映画「グラディエーター」です。

 

引用元:グラディエーター / © 2000 DREAMWORKS L.L.C. AND UNIVERSAL STUDIOS.  ALL RIGHTS RESERVED.

 

 

 

 

作品紹介

 

第16代ローマ皇帝であるマルクス・アウレリウス統治下でのローマ帝国を舞台にした歴史映画で、2000年にアメリカ合衆国で公開されました。 主人公は皇帝と対峙すべく、ローマ帝国の文化の象徴である剣闘士(グラディエーター)として名を上げ、復讐を果たす内容です。

 

監督は「エイリアン」で世界的大ヒットを飛ばしたリドリー・スコットが、主演には「インサイダー」でアカデミー主演男優賞にノミネートされ注目を集めたラッセル・クロウがつとめ、他にホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、オリヴァー・リード、リチャード・ハリスなど豪華なキャストが脇を固めております。

 

映画レビューサイト「Rotten Tomatoes」では、78%もの肯定的な評価を受け、批評家たちの一致した見解は「監督と豪華キャストによる、ローマ帝国の剣闘士たちの迫力ある闘いと、その裏で起きようとしている政治的陰謀を見事に表現している。」となりました。

 

また、同様の映画レビューサイト「Metacritic」でも、46件のレビューのうち、33件が高評価を下しました。

 

興行収入でも成功をおさめ、初週で3483万ドルを記録し、数週間で巨額であった製作費1億300万ドルを全額回収します。 正規上映終了時の全米興行収入は、約1億8770万ドルに達し、続いて世界公開が始まり最終的な興行収入では、約4億5764万ドルという金額に達して商業的大成功を収めます。

 

そして芸術的評価という点では、第73回アカデミー賞でラッセル・クロウが主演男優賞を受賞し、他に作品賞、衣装デザイン賞、録音賞、視覚効果賞を獲得しました。 アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞などで36個もの賞を受賞して大成功をおさめています。

 

引用元:YouTube公式より / GLADIATOR Official Trailer

 

見どころ&おすすめ

 

先ず概観(がいかん)としては、闘いのシーンとそのスケール感の大きさに目を奪われてしまうなど、映像だけでも観る価値のある作品です。

 

「ブレードランナー」、「エイリアン」などで独特な映像美を表現したリドリー・スコット監督が、SFXだけでは表現しきれない重厚感や臨場感あるローマ帝国を見事に再現しているところが最大の見どころです。

 

そして、本作で使われた音楽は、「パール・ハーバー」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなどで音楽を担当した映画音楽界の巨匠ハンス・ジマーらが担当し、ゴールデングローブ賞では音楽賞を受賞したほか、アカデミー賞で作曲賞にノミネートされるなど高い評価を受け、この作品の世界観に合った壮大な音楽が、本作を大いに盛り上げているところも注目ポイント。

 

陰謀におとしいられ、愛する家族を殺され全て失い、英雄から一転、奴隷そして剣闘士となる不運な運命に翻弄されながらも、誇りを失わず気高く生きる主人公の生き様も見どころでしょう。

 

また、20キロ近くの減量をして骨太な主人公を演じたラッセル・クロウ。 さすが主演男優賞を受賞しただけのことはある迫真の演技は見ごたえ十分で、彼の代表作品となりました。

 

古代ローマ帝国や歴史に興味がある方には、ぜひ観ていただきたい作品です。

また、歴史に興味がない方でも、娯楽作品として十分以上に楽しめる内容なので、ご覧になることを強くおすすめします。

 

映画「グラディエーター」は、男の中の男が満載の映画。

 

おすすめ度

 

★★★★★             5点

 

主要キャスト・スタッフ

 

マキシマス・デシムス・メリディアス (ラッセル・クロウ)
マルクス・アウレリウス (リチャード・ハリス)
ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス (ホアキン・フェニックス)
ルッシラ (コニー・ルーセン)
ルキウス・ウェルス(子) (スペンサー・トリート・クラーク)
グラックス議員 (デレク・ジャコビ)
アントニウス・プロキシモ (オリヴァー・リード)
ジュバ (ジャイモン・フンスー)
 

 

監   督 リドリー・スコット
脚   本 デヴィッド・フランゾーニ
  ジョン・ローガン
  ウィリアム・ニコルソン
原   案 デヴィッド・フランゾーニ
製   作 ダグラス・ウィック
  デヴィッド・フランゾーニ
  ブランコ・ラスティグ
製作総指揮 ローリー・マクドナルド
  ウォルター・F・パークス
 
 

 

2000年 公開   155分   アメリカ・日  本

 

           171分   (完全版)

 

登場人物の紹介

 

物語に登場する主要人物のキャラクターを紹介します。

 

マキシマス・デシムス・メリディアス


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ローマ軍の将軍で、属州ヒスパニア(現代のイベリア半島)の出身。 アウレリウス帝への忠誠を誓い、皇帝からも寵愛(ちょうあい)を受けた人物。

 

将軍でありながら、自らも最前線で戦う勇敢かつ聡明な人物で、人望に厚く周囲から信頼を寄せている。 出世欲などなく、家族が何よりも大切だと思っている。

 

マルクス・アウレリウス・アントニヌス


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一代でローマ帝国を拡大した第16代ローマ皇帝で、「賢帝」と呼ばれる通り賢い老帝。 常にローマ帝国の未来を考えている人物である。

 

帝政に限界を感じ、共和政へとローマを変えようと考えていた。

 

ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス


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アウレリウス帝の嫡男(ちゃくなん)で皇太子である。 自己中心的で支配欲が強く、ナルシスト(自意識過剰なタイプ)な人物で、次期皇帝は自分だと思い込んでいる野心家。

 

皇帝の愛情に気づかず育ったため、常に愛情に飢えている。 また、賢帝たる父に屈折した感情を持っている。

 

ルッシラ


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コンモドゥスの実の姉で、アウレリウス帝に似て賢明で心優しい性格の人物である。

 

若き日はマキシマスと恋愛関係にあったが、身分の差から結婚をあきらめ、マルクス・アウレリウスの共同皇帝であるルキウス・ウェルスと結婚し、ひとり息子のルキウスを大切にしている。

 

ルキウス・ウェルス(子)


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ルッシラの子で、コンモドゥスとは甥の関係。

父である皇帝ルキウス・ウェルスの名を引き継いだと思われる。

 

グラックス議員


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元老院議員で、高潔な性格の人物である。 

 

元老院の腐敗が蔓延するローマ帝国の中、コンモドゥスの独裁を押し留めようと奔走し、ローマの共和政への移行を望んでいる。

 

アントニウス・プロキシモ


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ズッカバルという名の町を根城にする奴隷商人。 かつては自らも名うての剣闘士として活躍しており、その功績からアウレリウス帝から自由を与えられた人物である。

 

マキシマスに剣闘士としての才覚を見出し、修行をさせる。

 

ジュバ


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アフリカ北部のヌミディア人の奴隷で、マキシマスと共に奴隷商人のプロキシモに剣闘士として売り飛ばされる。

 

独特の死生観(しせいかん)を持ち、マキシマスにまだ生きて成すべきことがあると諭される。 そして、マキシマスとは深い友情を結ぶことに。

 

簡単な、あらすじ

 

引用元:グラディエーター / © 2000 DREAMWORKS L.L.C. AND UNIVERSAL STUDIOS.  ALL RIGHTS RESERVED.

 

時代は、領土の拡大を続けるネルウァ=アントニヌス朝の古代ローマ帝国。

 

五賢帝最後の皇帝マルクス・アウレリウスからの信頼を得ている将軍マキシマスは、次期皇帝の座を継いでほしいと皇帝から打ち明けられる。

 

しかし、次の皇帝になることに固執していた皇帝の息子コンモドゥスは、その話を知り、父である皇帝を殺害し玉座を奪い、さらにマキシマスに死刑宣告をするのだった。

 

マキシマスは処刑から逃げ出し、故郷へと逃れる。

 

しかし、心の支えであった妻子を、コンモドゥスの手下に殺されてしまい、絶望の中、心身ともに極限状態にあった彼は、気を失ってしまった。

意識を取り戻したときには、奴隷として自由を奪われた状態となっていた。

 

マキシマスは奴隷商人のプロキシモに買われ、彼の元で剣闘士として修業を積むことに。そして、しだいに剣闘士として人気を得たマキシマスは、首都ローマのコロッセウム(円形闘技場)で行なわれている剣闘技大会に参加することになる。

 

そこでの活躍が皇帝の目に留まるのだが、そこには自分が処刑の指示を出し、殺したはずのマキシマスが目の前に現れたことに驚くコンモドゥス帝。

ここで、マキシマスはコンモドゥスとの再会を果たす。

 

亡きアウレリウス帝と愛する妻子のため、コンモドゥス帝に復讐することを誓う。

果たして、マキシマスは復讐を果たすことはできるのだろうか・・・

 

引用元:グラディエーター / © 2000 DREAMWORKS L.L.C. AND UNIVERSAL STUDIOS.  ALL RIGHTS RESERVED.

 

映画と実話との相違点

 

はじめに、歴史の認識には色々な諸説があります。 あくまでも個人的な見解であることをご理解ください。

 

コンモドゥスは暗殺などしていない!?

映画では、自分を皇帝にしてくれないコンモドゥスが、父であるアウレリウス帝を殺害することになっております。

 

しかし、そのような事実はなく、生前からアウレリウス帝はコンモドゥスを共同統治者として帝王の位にしておりました。 なので帝位の継承問題などそもそもなかったのです。 また史実では、アウレリウス帝がコンモドゥスを甘やかしたことで、映画のコンモドゥスより醜かったとか。

 

きっと当時の皆さんは、名君たるアウレリウス帝があんな暴君を後継者にしたという事実を受け入れがたかったのではないでしょうか。

 

ローマ史上最低の皇帝

元老院によって記録を抹消されたローマ皇帝が3人おりました。 ネロ、ドミティアヌス、そしてコンモドゥスです。

 

ただ、ネロとドミティアヌスは、功績を残したのも事実なので、再評価の動きもあるそうです。 しかし、元老院から嫌われ、かつ功績がない皇帝はコンモドゥスだけでした。

 

アウレリウスは、ルキウス・ウェルスと共同統治を行なっていましたが、ルキウスは早死にしてしまいます。 そこでアウレリウス帝は、息子を次期皇帝にはせず自分が在位しているときに、自分と同じ皇帝の地位に就けたのです。

 

よって、無理やり皇帝の地位を得たわけではなかったのです。

 

アウレリウス帝は、どこに行くときもコンモドゥスを連れて行っていたようですが、息子コンモドゥスの素質を見抜くことができませんでした。

いつの時代も、親は子供を過大評価しがちですもん。 名君と称されたアウレリウス帝も、残念ながら見抜けなかったのでしょう。

 

そしてアウレリウス帝は、コンモドゥス帝を甘やかしすぎたのです。

つまり、アウレリウス帝は優れた人格の持ち主だとしても、優れた父親ではなかったということです。

 

そして、あることがきっかけでコンモドゥスはおかしくなってしまいます。

 

ただ唯一、コンモドゥス帝は人民を苦しめる乱暴で残虐な政治を行ないましたが、浪費はしなかったそうです。

 

ルッシラは悪女だった?

映画では常識のある良いお姉さんで、共和政を願う善良な人物でしたが、実際は悪女だったようです。

 

コンモドゥスは姉を慕(した)っていたのに、姉のルッシラは、弟のコンモドゥス帝を暗殺しようとしたのです。 そのことがきっかけで、コンモドゥス帝はおかしくなってしまいました。

 

そりゃー、信頼していた肉親が自分を殺そうとしていたら、おかしくなってしまうのも分かります。

 

ルッシラは、アウレリウス帝と妻ファウスティーナの間に生まれ、最初の夫がアウレリウス帝との共同統治者であるルキウス・ウェルスという申し分のない身分です。

ただ、彼女にとって不幸だったのが、夫であるルキウスが早死にしてしまったこと。 そして、次の結婚相手はポンペイアヌスという軍人でした。

 

コンモドゥスが皇帝になって2年後、彼は劇場からの帰りに手下に襲われる事件が起こります。 手下はすぐに捕まりましたが、その首謀者の中にポンペイアヌスがいたのです。 コンモドゥスは、そりゃー驚いただろうと想像に難くありません。 実の姉の旦那ですもん。

 

理由は、コンモドゥスの妻が妊娠したことで、ルッシラは自分の地位が危ぶまれると考えたからとか、彼女の夫ポンペイアヌスを即位させるためだとか、諸説ありますが今となっては知る由もありません。

 

暗殺の首謀者は処刑され、ルッシラはカプリ島に流された後、原因不明の死をとげたそうです。

 

ここでもアウレリウス帝の子育てに問題があります。

姉は命を失い、弟は暴君と化してしまったのですから。

 

これを境に、ローマ帝国は坂道を転げ落ちる石のように衰退していきました。

 

実際のアウレリウス帝は名君だったのか?

映画だと共和政が復活しそうな雰囲気でしたが、実際は元老院軽視の軍人皇帝時代が始まってしまうのです。 確かにアウレリウス帝は、元老院重視の政治を行なっていましたが、息子のコンモドゥスを共同皇帝に就けた時点で共和政の復活など考えていなかったことが分かります。

 

アウレリウス帝の人格は、思慮深くて公明正大だったようで、それゆえ名君としての印象をみんなが持ちました。 

 

彼は、18歳で会計検査官に、19歳でローマ執政官に就任するなど順調に出世街道を進んでいきます。 ローマ執政官は皇帝に次ぐ地位なので、未成年が国家のナンバー2になってしまったわけです。 ほんらいローマ執政官は、40歳以上という年齢制限があったにもかかわらずの大抜擢でした。

 

大出世した理由は、アウレリウスがもう1人の後継者候補であるルキウスよりも優秀で、与えられた政務を着実にこなしていったからでしょう。

 

また、子宝にも恵まれ、妻ファウスティーナとの間に14人の子供が生まれて、そのうち6人が成人します。 無事に成人した男子は、ローマ帝国史上最悪な暴君コンモドゥスただ1人。 のちにこの子供が、ローマを混沌へと導いていった。

 

また、アウレリウスは皇帝になるのは自分だけではなく、ルキウス・ウェルスも同時にであると宣言します。 これは歴史的に例を見ないことで、こうして史上初の共同統治が始まったのです。

 

しかしその後、アウレリウス帝は自分の息子を共同統治者にするなど、身内びいきが目に余り、さらにローマ帝国内部は腐敗がはびこり帝国は荒廃していきます。

 

天災や飢餓などで、確かにアウレリウス帝の時代は混乱期でした。 しかしゲルマン人の襲来やパルティア問題などは、彼の統治能力の低さが原因だったようです。

 

アウレリウス帝は、現在のウィーンであるウィンドボナの遠征先にて、59歳で亡くなりました。

 

そもそも、マキシマスやグラックスなる人物はいない!

史実とこの映画の最大の違いは、主人公のマキシマスは架空の人物で、その彼が実在したコンモドゥス帝を殺害してしまうことでした。

なんとなく史実っぽく作ったことが問題で、学者たちからは結構なクレームが来たとか。

 

また、実際にはグラックス元老院なる人物もいません。 

紀元前133年ごろに改革を行おうとしたが、失敗に終わったグラックス兄弟の名前をとって作られた架空の人物のようです。

 

グラックス兄弟が暗殺されてから内乱がはじまり、共和政が消滅に向かっていくので、共和政支持者に兄弟の名前を付けたのは、製作陣の遊び心だったと思われます。

 

ちなみに、スタンリー・キューブリック監督の「スパルタカス」にもグラックス議員なる人物が登場します。

きっと共和政支持者に兄弟の名前を付けるのは、表現方法の1つなのでしょう。

 

コンモドゥス帝は剣闘士だった

史実では、コンモドゥスは自身が剣闘士として戦うことを好んだ皇帝でした。

一説には、野獣とは1000回以上も闘い、剣闘士とは735回も対戦したそうです。

皇帝なんだけど。

 

剣闘士としては民衆から支持を得ていたが、政治には無関心の最悪な皇帝。

政治は他人まかせ、自分は美女や青少年を600人も集めて、宴や乱行で遊びほうけてたんだとか。 そんな人物が果たしてまっとうな政治を行なうことができたのだろうか。 皇帝なのに。

 

コンモドゥス帝は、剣闘士としての訓練は真面目に取り組みますが、政治は友人や側近に任せたのです。 まだ若くて勉強不足の彼は、きっと皇帝の業務がわずらわしかったのでしょう。

 

そして、連日の闘技場の運営費がかさみ、さらにローマの大火災によって大きな出費が必要となり、公庫の莫大なお金は限界に達します。

 

そこで裕福層に適当な罪をかぶせ、財産を没収し財政を建て直します。

しかし、裕福層や元老院は我慢の限界に達し、コンモドゥス帝の暗殺を計画します。

 

毒の入ったワインを飲ませて弱らせ、彼の入浴中に屈強な剣闘士によって絞殺されます。 享年31歳の若さでした。

 

ローマ帝国の政治

古代ローマの共和政は、民会、政務官、元老院から成り立っておりました。

「民会」は一般市民全体、「政務官」は一般市民による選挙で選ばれた政治家の集まり、そして「元老院」は元政務官の中から選ばれた賢者の集まりです。

 

皇帝は民会の代表として政治的権限を持っており、共和政の守護者としての立場でもあります。

 

皇帝(民会)、政務官、元老院の間に上下関係は無いというのが表面的な決まりでしたが、実際は今の時代と同じような忖度や癒着が横行していました。

 

また、ローマの共和政は、後世になって元首政(プリンキパトゥス)と呼ばれました。

 

裏話と考察

 

ここで「グラディエーター」を深掘りしてみましょう。

 

架空の主人公「マキシマス」


引用元:グラディエーター / © 2000 DREAMWORKS L.L.C. AND UNIVERSAL STUDIOS.  ALL RIGHTS RESERVED.

 

まだ初期の草案のころ、コンモドゥス帝を暗殺したとされる剣闘士ナルソキッソスをモチーフに考えられましたが、ナルソキッソスに関する記述が乏しかったため、さまざまな歴史上の人物がモチーフとして加えられ、今回の独創的な主人公「マキシマス」が形作られました。

 

史実への反響

本作は学問的な歴史資料ではなく、娯楽としての史劇作品であって必ずしも史実性が重要である必要はないが、大成功を収めた歴史映画「グラディエーター」は「誤ったローマ時代の知識を与える」と批判を受けました。

 

リドリー・スコット監督は、史実のローマ時代に深い興味と敬意を持っていましたが、作品を盛り上げるための演出や脚色を行い、史実考証スタッフと衝突することも多かったそうです。

 

ローマ時代にカフェという文化はないのに、コロッセウムにカフェが用意されている場面があります。 また、登場人物の衣装なども、史実に基づきつつ、より華やかで映像栄えするアレンジにしました。

 

そして、体力自慢の暴君コンモドゥス帝は、気弱で情緒不安定な青年に描き、アウレリウス帝を皮肉屋の共和主義者とするなど独自の歴史解釈を行ないました。

 

一番の論争の種となったのは、コンモドゥスによる父アウレリウスの暗殺です。 多くのローマ時代に関する歴史書では、コンモドゥスによる暗殺を否定しています。

 

コネチカット大学のアレン・ウォード教授は、部分的に擁護(ようご)しつつも、「作家が娯楽のために許されている脚色は、史実を乱雑に扱うことへの許可証ではない」と批判しました。

 

ゲルマニアでの闘いの撮影秘話


引用元:グラディエーター / © 2000 DREAMWORKS L.L.C. AND UNIVERSAL STUDIOS.  ALL RIGHTS RESERVED.

 

1995年の5月に、映画冒頭の冬のゲルマニアでの戦闘シーンから撮影が開始されました。 この闘いでローマ帝国軍は火矢を放ち、森が炎に包まれます。

 

撮影場所であるイングランドのボーンウッズでは、もともと森林を伐採する予定があり、そのことを知ったリドリー・スコットはこれを活用して森の木々を燃やすなどの撮影許可を取りつけたのです。

 

本物です


引用元:グラディエーター / © 2000 DREAMWORKS L.L.C. AND UNIVERSAL STUDIOS.  ALL RIGHTS RESERVED.

 

ゲルマニアでの戦闘シーンで将軍マキシマスの顔に傷がありますが、この傷は特殊メイクではなく、本当の傷でした。 スタントマンなしで撮影にのぞんだラッセル・クロウは、馬に乗って後退した際に枝が顔に刺さるアクシデントがあり傷を負いました。

 

その他にも、激しい剣闘技のために右手の人差し指の感覚が撮影後2年間も麻痺が残りました。 さらに、足の骨折、腰骨のひび、アキレス腱損傷、二頭筋の腱の部分断裂、そして数か所の脱臼など、撮影中に多くの怪我をしてしまいました。

 

また、コロッセウムの地面からトラが現れ、剣闘士に襲いかかる場面があり、マキシマスに襲いかかるシーンは、緊張感あふれる映像に仕上がっております。

 

このトラはCGIによって作られたものではなく本物で、映像は実写を合成して作成されました。 トラがマキシマスに飛びかかるシーンは、餌を持った調教師の背後からトラを飛びつかせて撮影されました。

 


引用元:グラディエーター / © 2000 DREAMWORKS L.L.C. AND UNIVERSAL STUDIOS.  ALL RIGHTS RESERVED.

 

ルッシラのビンタ(平手打ち)を考察


引用元:グラディエーター / © 2000 DREAMWORKS L.L.C. AND UNIVERSAL STUDIOS.  ALL RIGHTS RESERVED.

 

アウレリウス帝が亡くなった後、新皇帝になったコンモドゥスは、ルッシラの忠誠の意思を確認するために手を差し出します。 手の甲に口づけをすることは、忠誠を誓う証のようなものです。

 

ルッシラは、コンモドゥスにビンタを食らわした後、彼の手に口づけをします。

 

ルッシラは、父アウレリウス帝を殺したのがコンモドゥスだということに気づいていたのです。 残念ながら、弟のコンモドゥスが新皇帝になってしまった今、彼に抵抗すればどうなるかをルッシラは分かっていました。 

 

彼女が口づけをする前にビンタをしたのは、弟が父を殺したのを知っていることを行動で示したかった彼女なりの抵抗、唯一の感情表現だったのでしょう。

 

一方のコンモドゥスは、忠誠の口づけをされ「父親を殺しても、私を愛してくれた」と受け取ったのではないでしょうか。

 

マキシマスの台詞を考察


引用元:グラディエーター / © 2000 DREAMWORKS L.L.C. AND UNIVERSAL STUDIOS.  ALL RIGHTS RESERVED.

 

剣闘の後、マキシマスの勝利に沸く中、コンモドゥスは敗者にとどめを刺すことを彼に指示をしますが、マキシマスはその指示に反し挑発的に武器を放棄します。

 

観衆はマキシマスの慈悲を称えますが、コンモドゥスは苛立ちを隠しません。 コンモドゥスは、妻と子供は無様に死んでいったと、マキシマスを挑発しますが、マキシマスは冷静に「威を誇る日もじきに終わりです、殿下」と言い残してその場を去ります。

 

本来、皇帝に対しては「陛下(へいか)」の敬称で呼ぶところを、マキシマスはあえて「殿下(でんか)」と呼んだのです。 ちなみに「殿下」は、皇族や王族などの敬称です。

 

マキシマスは、コンモドゥスを皇帝とは認めないことを表現したのです。

あえて間接的な表現で相手を見下したところに、マキシマスの知性が感じられる台詞でした。

 

感  想

 

引用元:グラディエーター / © 2000 DREAMWORKS L.L.C. AND UNIVERSAL STUDIOS.  ALL RIGHTS RESERVED.

 

個人的にはローマ帝国のお話しとなると、チャールトン・ヘストン主演の映画「ベンハー」そして、カーク・ダグラス主演の「スパルタカス」そして、それより前の古代ギリシャ時代の映画でブラッド・ピット主演の「トロイ」など不朽の名作を思い出してしまいます。

 

とくに、「ベンハー」の馬を4頭つないだ戦車の大迫力な競争が強く印象に残っておりますが、本作「グラディエーター」はそれにも勝るスケール感と臨場感があります。 さっそく、冒頭のゲルマニアでの闘いのシーンから迫力に圧倒され、グッと引き込まれてしまいます。

 

まさに、最高の映像と最高の音楽との融合が、この作品の醍醐味なんだと思いますし、その重厚感たる迫力はいつの時代になっても色あせない名作として記憶されることでしょう。

 

また、個人的には以前にも書きましたが、エキストラを含め登場人物の多い作品には良作が多いと思います。

 

ストーリー展開も非常にシンプルで分かりやすく、抑えられていた感情がラストに解放されるなど、自然な流れでカタルシスを感じさせてくれます。 そこへ本作の音楽にも携わるリサ・ジェラルドの透きとおる歌声が流れてくると、もう涙が止まりません。

 

人は何に命をかけるのか。 愛する家族のため、君主のため、国のため、はたまた保身のためなのか。 自分の信念のために命を賭(と)して生きようとする主人公の生き様には心をうたれます。 

 

元老院たちの合議制からポピュリズムに変革していくローマ帝国の社会と現在の民主主義制との繋がりを考えながら、忠義を尽くす主人公が仇討ちをするというお話は「忠臣蔵」を連想してしまいます。 考えすぎかもしれませんが、この内容は日本人が好みそうなストーリー展開だなっと感じました。

 

また面白いのが、マキシマスとコンモドゥスの2人の対比です。

帰る家を失ったマキシマス。 一方のコンモドゥスは、家に居場所がなかった。 絶望の淵に落ちたマキシマスの裏で、またコンモドゥスも絶望していたのです。 ただ、マキシマスは愛され、コンモドゥスは愛されなかった。

 

人一倍愛に飢えていたコンモドゥスは、なぜ愛されないのか?

この作品を観ていると、マキシマスを応援している一方で、コンモドゥスに憐れみを感じてしまいます。

 

ラッセル・クロウの演技はもちろんなのですが、そのコンモドゥス役を演じたホアキン・フェニックスの演技が素晴らしく、主役を飲み込む勢いがありましたね。

その演技たるや憎たらしいにも程がありますよ。

 

この映画は、史実のローマ帝国の歴史を大胆にも脚色した結果、深みのある人間ドラマ、そして新たに作られたローマ帝国を壮大なスケールで描いた、完成度の高い作品となりました。 歴史大作として、また最高のエンターテインメント作品として、これぞ「ザ・映画」という感じです。

 

ただ、実際の古代ローマ帝国時代では、コロッセウム(円形闘技場)で奴隷たちを戦わせる見世物が流行り、それを民衆が楽しんでいたという事実があったことは、色々と考えさせられますけど。。

 

民衆の英雄から一転、奴隷そして剣闘士となる主人公マキシマスは、優れた人格や能力でふたたび民衆を惹(ひ)きつけ味方につけていきます。 天賦(てんぷ)の才を持ったリーダーにふさわしい人物。 

 

まさに今、この現代に必要な人物で、このような人物に我が国のかじ取りをしてほしいと思います。 ただ残念ながら、そんな人物は今の国会議員たちの中には居ませんけど。。。

 

 

引用元:グラディエーター / © 2000 DREAMWORKS L.L.C. AND UNIVERSAL STUDIOS.  ALL RIGHTS RESERVED.

 

 

 

 

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