ジャンルを問わず一年中、映画漬けの生活を送っている、自称ゆるーい映画オタク⁉の私が
独断と偏見でオススメする今日の一本は、ユニバーサル・ピクチャーズが送るサスペンス・サイコ映画「激突!/Duel」です。
引用元:激突! / © 2006 Universal Studios. All Rights Reserved.
作品紹介
1971年にアメリカのテレビ映画用として製作された、サイコ的要素を取り入れた逃走劇作品です。
平凡なサラリーマンが、急ぎハイウェイを飛ばしていた時、前方を塞ぐように古いトレーラーがゆっくり走っていた。
そして、彼がそのトレーラーを追い越したことから、地獄のような恐怖が幕をあける。
第一回アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭のグランプリを受賞し、一躍その名を世界に知らしめた当時25歳の新人監督の衝撃作品です。
原作はSF作家リチャード・マシスンの短編小説「Duel」で、マシスン自らが脚本を担当し、ユニバーサル・ピクチャーズから配給しております。
引用元:YouTube公式 / Duel(1971)
見どころ&おすすめ
物語の大半を主人公と彼のボロボロ車、そして古くて汚れたトレーラーだけで展開されていきます。
凄〜くシンプルなストーリーの中に、サイコパス的な要素を取り入れた非常に面白い内容で、観ている者を最後まで画面から離さず、ハラハラドキドキさせてくれます。
騒がしく派手なタイプではなく、じわじわと恐怖のボルテージを上げていく、そんな印象深い作品でしょうか。
またこの作品は、トラックと乗用車のカーチェイスシーンだけでなく、主人公の内面にもフォーカスされ、彼の心理状態や緊張感などが上手に描かれており、観てる側が主人公と共感しながらストーリーに没入できるのも、見どころポイント。
古い作品ですが、サスペンス・サイコ系映画が好きな方、いや、映画好きな方なら、あの有名監督の長編映画デビュー作品なので、先ずは観て下さい。
損はさせませんから。
この映画を観ると、彼の天才ぶりが良くわかります。
簡単な、あらすじ
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
デイヴィッド・マンが運転する車は、カルフォルニアでの商談のため、荒野のハイウェイを順調に走っていた。
車のカーラジオを聞き流しながら少し先を急いでいると、前方にのんびり走る一台の汚れたトレーラーが走っている。
トレーラーからの排気ガスを不快に感じ、何気なくトレーラーを追い抜いて行く。
すると、トレーラーはスピードを上げ、マンの車を抜き返してしまう。
そしてまた、ノロノロとマンの前方を塞ぐようにノロノロと走り出す。
なんだこいつは!とマンは再度トレーラーを抜き、スピードを上げトレーラーを大きく引き離して行くが。
ここからハイウェイ上での、恐怖のカーチェイスが幕を開ける。
トレーラーは唸りを上げ、マンの車を後ろから追突する勢いで威圧してくる。
しかも運転主の顔がわからず正体不明なのも余計に不気味さを増幅させていく。
マンがカフェに逃げ込めば、相手も停車して待っているし、挙句には後ろから追突してくる始末。
また、通過する貨物列車を待っていると後ろから押してくる。
電話BOXで警察に助けを求めようとすれば、電話BOXにトレーラーごと突っこんでくるなど、段々と常軌を逸した行動がエスカレートしていく。
逃げても逃げても執拗に追いかけてくる。
ただひたすら一本道のハイウェイを自分と相手の車だけ・・・
ある意味、逃げ場のないハイウェイが舞台。
はたして、巨大な鉄の怪物から独りマンは逃げのびることができるのだろうか?
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
おすすめ度
★★☆☆☆ 2点
主要キャスト・スタッフ
デイヴィッド・マン (デニス・ウィーバー) |
妻 (ジャックリーン・スコット) |
カフェの店主 (エディ・ファイアストーン) |
バスの運転手 (ルー・フリッゼル) |
ガソリンスタンドの女店主 (ルシール・ベンソン) |
ラジオのパーソナリティ (スウィート・ディック・ウィッティントン) |
トレーラーの運転手 (キャリー・ロフティン) |
他 |
監 督 | スティーヴン・スピルバーグ |
脚本・原作 | リチャード・マシスン |
製 作 | ジョージ・エクスタイン |
他 |
1971年 公開 90分 アメリカ
1973年 公開 日 本
この映画を、考察!
あの監督
当時、21歳の史上最年少で監督デビューしますが、当初の頃は映画の仕事をなかなかもらえず、TVムービーで生計を立てていました。 面白くない脚本ばかりでしたが、そこは後の天才監督、必ずこだわりの部分を入れ込み実績を重ねた結果、周りからの評価もしだいに高くなっていきます。
そして偶然、この「激突!」の小説と出会い、「なんてヒッチコック的な素材なんだ」となり、映像化にいたるのでした。
そう、あの監督さんは、キャスト紹介でもう記述してますが、皆さんもご存じの、スティーヴン・スピルバーグさんでした。
脚本でのトリビア
この脚本のアイデアは、ケネディ大統領が暗殺された当日のことです。
脚本・原作者のリチャード・マシスンが車で友人と帰宅する途中、細い道を走っていると突然、トラックにあおられてしまいます。
執拗に追いかけてくるトラック。
とっさにマシスンは横道に逃げ込み、そしてその横を物凄い勢いでトラックが通り過ぎて行った。
車内の友人は青ざめていましたが、マシスンはそこでひらめいたのです。
すぐに、このアイデアを書きとめたのが「激突!/Duel」の原点なのでした。
そもそも、この映画
この映画は1971年当時、アメリカで放送されていた「ABC Movie of the Week」というテレビ放送向けに製作されたものでした。
なんと作品の納期が、撮影を開始してから3週間後というハードスケジュール。
撮影期間は12〜13日程度、しかもスタジオを一切使わず現地撮影のみなど、色々なアイデアを駆使して困難を乗り切ったようです。
それを日本の日曜洋画劇場で放送するため、監督に73分の本編を90分に編集させて上映しました。 よくもまあー、あの監督にフィルムの継ぎ足しを依頼できたなと、今なら絶対無理な相談でしょうね。
マンの車とトレーラー
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
サラリーマンであるマンが乗る乗用車は、米クライスラー製の「プリムス・ヴァリアント」(約140馬力、最高速度150Km/h 辺り)で、普通のコンパクトカー。
それを砂漠の中でも目立つようにと、新車設定にはない赤色に再塗装して登場させていました。
一方のトレーラーは、「ピータービルト281」というテキサス州に本社があるトラックメーカーの車。 物語の中で、この怪物トレーラーが150Km/hものスピードで迫って来るのは、恐怖しかないでしょう。
撮影用のトレーラーは、リアルさと不気味さを高めるため、エンブレムが取り除かれ、ライトに羽虫をすり潰し、窓ガラスにはオイルやグリスを塗り運転手の顔が分からないようにして演出していました。
このトレーラー、映画の中で、なぜか色んな州のナンバープレートをつけて走っています。
なぜか?それは、後述で。
カフェでのシーン
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
ハイウェイ上で出てくるカフェは、実際にあるカフェで撮影されました。
なんとカフェのシーンは、本物のお客さんの居る横で撮影され、お客さんは最後まで撮影や彼らが俳優だったとは知らなかったそうです。 おかげで何気ない、いつもの日常がリアルに撮影できたと、脚本家のマシスンは満足したそうです。
犯人は、だれ?
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
原作では姿、顔を見せているそうですが、映画内では体の一部分のみの表現方法で、観ているこちら側の想像力をかき立たせます。
が、監督は違う意図があったのです。
トレーラーの運転手を犯人とする視点ではなく、トレーラーそのものを怪物に見立てて制作するのが意図だったようです。
生身のマンと鉄の殺人トレーラーとの対決だけに、フォーカスを当てた演出。
だから「犯人は、だれ?」には、焦点を当てなかった。
色々と展開が変わり飽きさせない映画もありますが、たまに分からなくなってくることもあります。
しかし、シンプルに焦点のみに当てて、魅せる映画も大事なんだなと感じました。
そして、この犯人の演出方法には、今後へのヒントが隠されていると感じます。
また、そのほかの演出も、次の作品に使用されています。
それも、後述に。
電話BOX
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
マンが電話BOXで警察に電話をかけるシーンで実は、電話BOXの窓に撮影していたスピルバーグ監督が映りこんでしまっています。
このシーンは制作した側も気づいてはいたが、映像の予備がないため、仕方がなくそのまま使うことになってしまったそうです。
その他を深掘り
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
小さいトリビアを3つ。
主人公のデイヴィッド・マンのマンは、人間の意味。
焦ったり悩んだりする人間らしさを強調するために、この名前にしたようです。
映画では明かされなかったのですが、設定ではトレーラーの運転手の名前は、keller(ケラー)となっていました。
これは、killer(殺人者)にかけたのではと推察されています。
原作の中で、マンがトレーラーに書かれている、keller を killer と読み間違えて、ビックリするシーンがありましたね。
物語終盤、山道を駆け上るマンが害虫駆除業者の車を警察車両と間違えて近寄るシーン。 業者の社名が「Grebleips」となっていますが、これは監督の姓を逆さから書いた文字でした。
気づきませんよね~
この犯人、実は
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
映画では、トレーラーの運転手は追い越しただけでキレるサイコ野郎でしたが、原作では連続殺人鬼だったのです。
色々な州でドライバーを殺害し、狩った戦利品として、そのナンバープレートをつけて走っている設定でした。
以降に引き継がれること
トレーラーを怪物に見立てた設定を、3年後の作品「JAWS/ジョーズ」では巨大サメを怪物の設定で引き継がれ、犯人のチラ見せの仕方も、映画中盤まで巨大サメの一部分だけしか見せないやり方で、恐怖をあおりました。
またこのチラ見せの手法は、1979年公開の「エイリアン」でも参考にされたのではと、個人的には思っております。
物語最後の場面、トレーラーが崖をダンプするシーンの効果音が、「JAWS/ジョーズ」のラストシーンでも採用されました。
因みに、その効果音は恐竜の鳴き声だそうです。
感 想
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
1971年の映画なので、映像や劇中の雰囲気に古さを感じます。
しかし、スピルバーグ監督の名を世に知らしめた、記念すべき第1作にして名作なのです。
相手は鉄の怪物、しかも姿を見せない敵に立ち向かうのは、気弱なひとりの人間。
その対比を描いたのがこの作品の魅力だと思います。
何をしたいのか、目的もわからず執拗に追いかけてくる不気味さ。
ただただ、恐怖しかありません。
最近よく、あおり運転が報道で取り上げられる昨今、他人事ではありませんね。
現実に、いつかこういう目に合うかもしれないと思うと、ゾッとします。
ちょっと気になったのが、1970年代のアメリカントラックは、あんな排気ガスがモクモクと出るものだったのでしょうか。
それとも効果を狙った演出だったのかな~
なんにせよ、CO2(二酸化炭素)排出をうるさく言われる現代社会では、あり得ないことですネ。
閑話休題。
ピンポイントな部分だけに焦点を当てた、非常にシンプルなストーリーに潔さを感じます。 しかし今の時代、こういうシンプルストーリーに挑戦するには、相当のひらめきやアイデア、そしてなかなかの勇気が必要かもしれません。
単純な内容ですが、非常に印象の残る映画だと思いました。
あらすじ
ー起ー
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
デイヴィッド・マンが運転する車は、カルフォルニアでの商談のため、荒野のハイウェイを順調に走っていた。
車のカーラジオを聞き流しながら少し先を急いでいると、前方にのんびり走る一台の汚れたトレーラーが走っている。
次第にそのトレーラーに追いついたマンは、その遅いスピードにイライラをつのらせ、またトレーラーからの排気ガスにも不快を感じ、何気なくトレーラーを追い抜いて行く。
すると突然、トレーラーはスピードを上げ、マンの車を抜き返してしまう。
なんだこいつは!とマンは再度トレーラーを抜き、スピードを上げトレーラーを大きく引き離して行く。
変な運転をするドライバーは世の中にもおり、この様な場面は、日常でもありそうな展開なのですが・・・
ここから先は、映画ならではの恐怖が、後ろから追いかけて来ます。
ー承ー
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
途中、ガソリンスタンドに立ち寄ると例のトレーラーもここに立ち寄り、マンがスタンドを先に出るが、すぐにトレーラーは追いつき、強引にマンを追い抜いていく。
仕方がなく一緒について行くが、嫌がらせのようにノロノロと走ったり、しまいには対向車が向こうから来るのに、追い越しの合図を送って危うく対向車と衝突事故になりかけたりなど、嫌がらせをしてくるトレーラーの運転手。
完全に頭にきたマンは、何とかトレーラーを抜くことに成功し、今度こそはとスピードを上げて振り切って行く。
したり顔のマンであったが喜びも束の間、トレーラーが物凄いスピードでマンの車に近づき、しまいには追突してくる始末。
危うくスピンさせられそうになった時、幸運にも通り沿いのカフェに逃げ込むことが出来た。
ホッとするマンだったが、向こうには例のトレーラーが停車していた。
気を取り直すためマンは、店内の椅子に腰掛け、店の中を見渡す。
たしか、トレーラーの運転手はカウボーイブーツを履いていたことを思い出す。
そして、店内でカウボーイブーツを履いた男を探し出し、これ以上追い回すのは止めてくれと注意をするが、争いとなり店から放り出されてしまう。
それを見ていた例のトレーラーは、マンをあざ笑うかのようにその場から走り去って行く。
何なんだコイツは!
急速に怒りから恐怖に気持ちが変わっていきます。
ただひたすら一本道のハイウェイを自分と相手の車だけ・・・
ある意味、逃げ場のない舞台、怖い、しかありません。
このサイコ野郎、ヤバいだろ・・・汗
ー転ー
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
動揺が収まらないマンだったが、もうトレーラーの運転手も気が済んだことだろうと考え、再び車を走らせる。
が、トレーラーはマンの車を待ち伏せしていたのだ。
そしてトレーラーの嫌がらせは続き、追突や、後ろから押してきたりを繰り返しながら、ハイウェイ上で2台のカーチェイスは続く。
挙句には、上手くやり過ごしたと思い、安心して踏切で貨物列車の通過を待っていると、後ろから押して線路内に車ごと押し込もうとするなど、トレーラーの運転手の行動は段々と狂気じみてくる。
マンは、たまらずガソリンスタンドを見つけ、電話ボックスに駆け込み警察に電話をしようとするが、トレーラーはマンを電話ボックスごと、ひき殺そうとしてきた。
このままでは、命が危ないと感じたマン。
平坦な道では、相手のトレーラーの方がスピードが早く、すぐに追いつかれてしまい、逃げ切るのは難しいと考えたマンは、大型車には不利な峠道へと逃げ込む。
案の定、トレーラーのスピードは徐々に落ち、マンとの差が開いていく。
よし、これなら逃げ切れると思った矢先、突然マンの車が悲鳴をあげる。
じつは、出がけのガソリンスタンドでラジエターホースの劣化を指摘されていたのだ。 無理な運転をしいられ、ラジエターホースから水が漏れだし、峠の上り坂でオーバーヒートを起こしてスピードダウンしてしまう。
何とか峠を上って行ったが、運転を誤り岩に激突し、エンストしてしまう。
なかなかエンジンがかからない! 焦るマン。
物語中一貫して、トレーラーの運転手の顔が見えず、手足の一部しか見えないので、巨大なトレーラーが、自分の意思をもって追って来ているかのような錯覚をおぼえます。
ここまでくると、トレーラーが怪物に見えてきます。
ー結ー
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
やっとエンジンが息を吹き返すが、もう逃げきることは出来ないと悟ったマンは、トレーラーとの対決を決意する。
そこで、峠の途中で崖へと続く丘に、トレーラーを誘いこむ。
崖のギリギリの位置で車の向きを変え、向こうからやって来るトレーラーと正面に向かい合う。
そして、まっすぐに猛突進して来るトレーラー。
マンは自分の車のアクセルに、カバンを挟みアクセルを固定し、そのままトレーラーに突っこんで行く。
マンはぶつかる直前に、ドアを開けて飛び降り、車は衝突した衝撃で爆発を起こす。 トレーラーはマンが飛び降りたことを知らず、構わずそのままマンの車を押していく。
爆発の炎と煙で視界を奪われたトレーラーは、そのまま崖に向って走る続け、崖に気がついた時には、急ブレーキをかけても間に合わず、断末魔のようにホーンを鳴らしながらマンの車と共に崖下に転落していく。
トレーラーの捻じれゆがむ音が、怪物の咆哮のように辺りに響きわたっていた。
崖の上から2台の残骸を見下ろすマンは、怪物との死闘から生還したことを喜ぶも、すぐに笑顔は消えていく。
そして崖のふちに座り込み、ときおり小石を投げながら、2台の残骸をただ眺めていた。
怪物トレーラーとの死闘を制し、たたずむマンは何を思っているのか。
生還した喜びと安堵感、そして孤独と死、などなど頭の中は放心状態や虚無感が去来しているような感じに見えます。
この後、本当の意味でマンは生還できるのか?物悲しい雰囲気のラストが印象的でした。
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.
引用元:激突! / © 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.